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四国中央市立三島西中学校

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卒業式 校長式辞

2020年3月17日 16時29分

式 辞

2020.3.17

 爽やかな青空の下、今まさに、全身を桜色に染め、全身全霊をかけて枝先の花を咲かそうとしている桜の木々は、今日旅立っていく卒業生の姿と重なって見えます。第四十四回三島西中学校卒業証書授与式にあたり、ご臨席くださった保護者の皆様には、心からお喜び申し上げますとともに、感染症対策による様々な制約についてのご理解・ご協力に感謝申し上げます。

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。一生一度で令和初の卒業式は、臨時休業中で規模縮小という前例のないものになりましたが、先生たちが愛を込め、心を込めて会場を整え、生徒会長の大西さんが在校生の思いを背負って参加してくれました。このような卒業式もまた、一生の思い出になるに違いありません。

 さて、義務教育9年間の課程を修了しようとする皆さんに、私から最後の宿題をふたつ出します。今、全世界で新型コロナウィルスの感染拡大対策が講じられていますが、臨時休校中のみなさんのために、学習や娯楽など様々なコンテンツが無料提供されたり、たくさんの企業や団体が様々な支援を講じたりするなど、善意のある温かい取組が広がっています。しかし一方で、デマやそれに惑わされる人々、マスクなどを巡る買い占め、転売、詐欺や争い、そして、様々な立場の人たちに対するいじめや偏見、差別、誹謗中傷など、人々の愚かな行動が、ウイルスよりも、早く広く、人から人へ伝染し、「ウイルスより怖いのは人間だ」などという言葉を聞くと、心が痛み、本当に悲しくなります。真実を確かめずにうのみにしたり他に伝えたり、自分に利害関係が及んだ時に人を傷つけ、排除し、自己中心的な言動を取る人間の弱さや醜さ、身勝手さは、みんなが学習してきた、部落差別やハンセン病問題などの人権問題を残してきた土壌と共通のものを感じざるを得ません。困難な時こそ、人間の本質や生き様が、問われます。

先日、私は、東京にいる教え子と電話でこんな会話をしました。ある日の仕事帰り、自宅マンションのエレベーターの中で、彼女は、面識のないおばあさんと二人っきりになったそうです。おばあさんが、マスクをしている彼女を見て気遣い、申し訳なさそうな声で、「ごめんなさいマスクをしていなくて。どこに行っても無くて、ごめんね。」と謝ったそうです。彼女は、すぐさま、自分のカバンの中にあった残りのマスクを取り出し、「おばあさん、これどうぞ。」と手渡したそうです。おばあさんは目に涙を浮かべ、何度も何度もお礼を言ったそうです。そのおばあさんのうれしそうな姿がうれしかったと、彼女は私に話してくれました。皆が目に見えない恐怖に怯え、不安になる時だからこそ、私たちには、このように他を思いやる優しさや温かさが必要です。決して分断されることのない人と人との強い絆やつながりが必要です。 

臨時休校前日、後輩や先生たちに感謝を伝えるために時間を下さいと、自分たちから懇願し感動的な歌声とメッセージを届けてくれた3年生の優しさや行動力。体育祭や合唱コンクールなどで、後輩のよき手本となりながら全校の絆や結束力を強めた3年生のリーダーシップ。人権・同和教育や人権劇を通して、身に付けた正しい知識や人を大切にする心、正義を貫く生き方。混沌とした今の社会は、正に、君たちが育んできた力を必要としています。この困難や混迷を打ち破り、希望に満ちた明るい社会を切り拓く力を君たちはもっています。だから、私からふたつの宿題です。

ひとつ、今のまま生き合ってください。西中の学びを忘れず生き合ってください。

ふたつ、幸せになってください。みんな、幸せになってください。

このふたつの宿題を、生涯通して仕上げてください。

最後になりますが、保護者の皆様、3年間、西中教育へのご協力・ご支援まことにありがとうございました。そして、こんなに素敵な子どもたちと出会わせていただき、本当にありがとうございました。

令和2年3月17日

    四国中央市立三島西中学校長   近藤 寛